もの云わぬ人形の言霊
蒼い湖のほとりに建つ洋館に、元は生きた人間だった人形が住むという。
彼女は突然口を閉ざし、人の声をきかなくなり
ついには、ただそこにあり続ける人形になってしまった。
誰も何も知らない。残されたものは、宛先のない手紙だけ、、、、、。
| いつからだろう。 あなたの「おまえなら頑張れる」が、ひどく重たいものになったのは。 いつも同じ笑顔で励ましてくれた。いつも言ってくれた。 「君なら頑張れる。だから頑張れ」 でも、知ってた?気づいてた? その言葉を聞くたびに、私はひどく息苦しくなることを。 頑張らなきゃいけない。 その思いが脅迫にも似てしまっていたことを。 |
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でも、あなたと私は違う人間。
そのうち私は、あなたの前では言葉が少なくなった。 でもあなたは この言葉がどれほどの絶望だったか これはきっと私の我侭。 |
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あなたに話していたことは誰にも言えなかったこと。 そして気がつくと、私は夜の闇を見つめていた。 |
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「あの人」が初めて目の前に現れたのは 漆黒の闇のような黒髪。 人ではないのかもしれない。おそらく人ではない。 「あの人」は私に眠る場所をくれた。 「あの人」に逢うとすべてを忘れてしまう。 「あの人」だけを見ていたい。 「あの人」についていく。 もしこの手紙を読む人があったなら、伝えてください。 |
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「あなた」も「あの人」もすべては彼女の妄想だったと人々はいう。
あるいは精神の病だったとも。
どのみち確かめる術はないのだし、本人が望んだ結果ならそれでいいのだと。
人であったころの彼女を知る者がいなくなっても彼女はそこに在り続けた。
館は彼女を守るかのように決して朽ちることがない。
館が守り、湖が抱くその場所は今も時の狭間で夜を待つ。
彼女が待つその人を、送りとどけるために。
彼女が望み、手にいれたもの、すなわち「永遠」