事件

屋敷に戻り、夜になってもレイスは戻らない。ここまでくるとさすがに気なってくる。

「レイス、、何処?」

今までに感じたことのない不安。一人の夜など慣れていたはずなのに。

すると、パンと聞きなれない音がした。2度、3度。

「今の、、銃声?まさか、、レイスじゃないよね、、」

部屋を出ようと扉に手をかける。だがしっかりと鍵がかかっていた。

「開けて!誰か!」

ドン、と扉にぶつかる音がした。

ガレリアが一歩下がると、レイスが乱暴に扉を開けて中に入り
後ろ手で鍵を閉める。そして、そのまま倒れた。

「、、グゥ、、ハ、、ッツ、、」

抑えているわき腹が朱に染まっていた。

「今の、、どうしてこんな、、しっかりして、薬どこです?」

「何の、、冗談だ、、私が死ねば、、逃げられるだろう、、」

「逃げて何処へ行くんですか。帰る場所なんてない。
 あなたがいなくなったら、僕は本当に一人になる。
 お願いです、一人にしないで」

「馬鹿、、が、、」

フッと笑った気がした。

そして、意識を飛ばした。

「嫌だ、、こんなの。目を開けて!」

軽いノックの音がした。

「誰?」

「先ほどの御者ですよ、開けてください」

信じていいのかわからない。けれど今は失うことのほうが怖かった。

ガレリアは鍵を開けた。部屋に入ったルディがレイスを見てのんびりと呟く。

「警告はしたんですけどね」

「お願い。助けて」

「そのつもりですよ。ひとまずは寝かせましょう」

ベットへと運ぶ。

「お湯を運んできますから、服を脱がせておいてください。薬と包帯はキャビネットの中です」

慣れているように指示をだし、暫くしてお湯を抱えて戻ってきた。

手際よく処置をして一息入れるころには、とっくに夜中を過ぎていた。

「助かる?」

「命に危険はないでしょう。ただ一晩は熱と汗が引かないと思います。
 よければついていてあげてください。あまり苦しむようなら、これ痛み止めです」

「ありがとう」

「彼のこと、恨んでいないんですか」

そう問われ横顔を見る。来た時はそうかもしれない。

でも今は、唯一傍らにいる相手。明日は出て行く身だとしても。

「今は、この人を失いたくない」

「そうですか。安心しました」

では、と礼儀正しい会釈をして、ルディは部屋をでていった。

「、、、ん、、、」

吐き出される息が熱い。冷やした布を当ててもすぐに暖かくなってしまう。

「フ、、ゥ、、」

潤んだ瞳がかすかに開いた。

「苦しいですか?痛み止めもあるけど」

「構わなくていい、、、どこかで、寝てろ、、」

「いさせてください。出て行く前の最後のお願いです」

手放さないかもしれない。その言葉に淡い希望を抱いた。

けれど、信じることをガレリアは知らない。

それが絶望に変わるなら、初めから期待などしないほうがいい。

それは、何処かで覚えた生きるための本能。

「、、、好きにしろ」

言い放ち、目を閉じる。長い夜の始まりだった。



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