

昔語り
冥鬼 「珂晶」
珂晶 「(ぴく)あ、、、はい、、」
冥鬼 「私がここに来てそれなりにたつけれど、まだびくついてるのかい」
珂晶 「、、、いえ」
冥鬼 「昔のこと、話されるのが怖い?」
珂晶 「話す、、、つもりなんですか?待ってください」
冥鬼 「あの主は華を眺めるようにお前さんを見ていた。
薄絹一枚のお前を私に突き出して”好きなように愛でろ”だなんて」
珂晶 「刻印を背負う者が主を殺して逃亡。
それが、何よりも重い罪だとはわかっています。
あなたのものになれというなら、、、、
他の誰にも知れないようにしてくれるなら、従うから。
だから、人里に戻すことだけは見逃して。
どうか、、、冥鬼、、様」
冥鬼 「早とちりしなさんな。昔のことを持ち出すつもりも、連れ戻すつもりもない。
冥鬼でいいよ」
珂晶 「、、、、本当に?」
冥鬼 「私だって、刻印を持つ者の運命だなんて馬鹿らしいと思うもの。
付き従うだけが役目なんて。ただ、、、」
珂晶 「、、、ただ?」
冥鬼 「お前さんに刻印を彫った相手。身内を妖しに殺されてるんだ」
珂晶 「まさか、、、だって、互いに贄を交換して差し出し、無事に戻ることで争いはしないと。
その取り決めで、どうにか成り立っていたではないですか。
大帝と、人里の長である鳳牙殿が懸命になっていた」
冥鬼 「確かに努力はしたけど、人里も妖しの里も
一人が全てを掌握できる広さじゃないだろう。
手の届かないところもある。力不足とは違う意味でね。
あんな男でも友人だった。あの一件で別人のようにかわっちまった」
珂晶 「どうして妖しだと」
冥鬼 「見たっていう情報があった。角に光る瞳が殺めたと。
どこまでが本当だかはわかりゃしないよ。けど、信じた。
失った悲しみとやりきれなさを向けるどこかが欲しい。
それは、当然だろう?
妖しを憎むことで、あいつはどうにか保ってたんだ。
そっちにとっては、いいとばっちりだったろうけど」
珂晶 「、、、香玉がそうだった」
冥鬼 「香玉?」
珂晶 「香玉の兄が、贄として私たちのところに来たんです」
冥鬼 「死なせたのかい?」
珂晶 「いえ。一年後に人里に帰りました。
私たちは、それで終わったと思っていた。
その次に妖しの里に来た贄が香玉。
兄は、人里に戻って時間をおかずに亡くなったそうです」
冥鬼 「、、、、、」
珂晶 「その原因は妖しの里にある。そう思って、自分から贄に志願した。
復讐のつもりで。それは叶いませんでしたけれどね。
香玉の兄が亡くなった原因が、本当に妖しの里にあるのか。
それかはわかりません。
けれど、そう思わなければやりきれなかったのでしょう。
、、、、、あの主も同じ気持ちだったんだ。
それに、大帝が贄を抱いてきたのは事実だし」
冥鬼 「憎しみは憎しみしか生まない。憎しみを返せば、憎しみしか返ってこない」
珂晶 「ええ、、、」
冥鬼 「でも、一緒にここに居るってことは、いくらか和らいだってことか」
珂晶 「珀翠が支えになっているのだと思います。珀翠にとっても同じように香玉が。
香玉が贄として妖しの里にいた間、近くで面倒をみていたのは珀翠だから。
妖しと人だって、歩み寄ることはできた。その可能性を信じることは、愚かだったんでしょうか」
冥鬼 「どうなんだろう。でも、そんな愚か者は嫌いじゃないよ」
珂晶 「冥鬼、、、、」