

始まりの地
「ふぅ、、、着いたと」
抱えたトランクからメモを取り出し、沙夜は小さなプレートと見比べた。
「キエヌのカーネリア教会。あってますね。それにしても立派な教会。前の所とは大違いだな」
地方の、その中でも小さな教会を任されていた沙夜の次の赴任先。
それは中央都市キエヌの教会だった。
広場に面したそれは、大きく立派な建物で人の出入りも多いと聞いている。
だが、大きさが変わってもやることは変わらないと思い直し、中へと入った。
持ってきた荷物は必要最低限のもの。元々贅沢に興味もなかった。
手早く荷物を片付け、外へ出てみる。
晴れた休日ということもあり、多くの人が広場に集まっている。
その中の1人が沙夜に声をかけた。
「おや、新しいお方かな」
「はい。この教会を任された沙夜といいます。
キエヌも初めてなので、慣れないこともありますがよろしく」
「そうか、キエヌも初めてでいなさるか。
町の者はこの教会が好きじゃよ。よろしくな」
「はい」
微笑んだ沙夜に、初老の男もにこりと笑い人の中に戻っていった。
「キエヌ、、、ここが始まりの地か」
愛しそうに町を見て、沙夜も中に戻った。空は、どこまでも高く澄んでいた。
トントントン、、、正確に刻まれる音。指先に神経を集中させ一点を見つめる。
トン、と最後の楔を打ち込み、フィエラは大きく息をついた。
「ふぅ、、終わった」
キエヌにあるアンティーク家具の工房。
芸術品とまで称されるここの品は、値は張るものの見合うだけの価値はあると評価は高い。
フィエラは、この工房での組み立てと絵付けを仕事としている。そしていつか、自分ひとりで一つの作品を作るのが夢。
「フィエラ、飯だぞ」
「はい」
工房の親方からの声に、フィエラは席を立った。
工房の昼食は務める職人たちの持ち回りとなっている。この日は、フィエラと年の近い同僚の者だった。
「あいかわらず上手だね」
同僚の作った昼食をゆっくりと口に運んだ。
とりとめのない雑談で食事が進み、そのうち話題は、新しく来た神父の話になった。
「フィエラは、新しく来た神父って見たか」
「僕はまだ。しばらく足を向けてる暇なかったから。皆は会ったの?」
「教会の前を通りかかっただけだけどな。ブロンドの長い髪で小柄だったよ」
「俺のじいさんが声かけたって。名前は沙夜だってさ」
「沙夜、、、」
フェイラは小さく反すうした。
「どした?」
「え、、何でもない」
「おい、そろそろ戻れ」
頃合をうかがっていた親方から声がかかる。
目の前を片付けて、それぞれの持ち場へ戻った。
「沙夜か。どんな人なんだろう」
教会へはよく足を向けている。会うことにはなるだろう。
ふと見上げた空は、どこまでも高く澄んでいた。