夢の始まり

いつだったろう。僕が他の人と違うことに気がついたのは。

僕の周りにいる人たちは白い翼を持っていた。でも僕の翼は黒。

そしてそれは、ここでは悪いことで、本当は僕はここにちゃいけない。

だから誰も僕に近づかないし、話す相手なんかいなかった。でも、、あの日。


「どうして、1人で泣いているの」

僕の目の前にいた人は、綺麗な白い翼を持っていた。

「僕はここにいちゃいけないんだ。
 だけど、何処に行けばいいのかわからない。僕の翼は黒いから」

「、、、白にうまれた黒は君のことか」

「、、、、、」

わかってる。僕の翼が黒だと知れば、みんな離れて二度とは近づかない。

「君のせいではないのに、何故君そのものを憎もうとするのだろう。、、、おいで」

何を考えているのだろう、この人は。

黒だとわかって手を差し出すの?一緒にいてくれるの?

「こわがらなくても大丈夫。何もしないから」

「、、、ほんと?僕の翼が黒でもいいの?」

「もちろんです」

差し伸べられた手に僕はすがった。初めて僕を認めてくれた人。

「私はシャルミラ。名前は?」

「キュリオ」

「一緒に居ましょう。キュリオ」


それから僕は、シャルミラと一緒に居た。シャルミラは僕を黒だからとは言わなかった。やっと安心できた。

だけど、僕と一緒に居ることでシャルミラがどんな言われ方をしているのかもわかってきた。

「、、、僕と居ることで、シャルミラまで悪く言われる」

「気にしてません」

いつも優しい。笑ってくれる。シャルミラといたいけど、何かあったら僕のせい。

それが少しだけ怖くなった。そして悪夢の始まり。


近づいちゃいけないって言われてる場所がある。誰もが恐れてる場所。

でも、この向こうには僕と同じ色の翼を持った人が居るとも聞いた。

僕と同じ色の翼。もしかしたら、そこが僕の居場所なのかもしれない。そう思って近づいた。

光がそこを避けるように、その場所が光を拒んでいるように茂った暗い森。

「誰も、、、いないの」

物音一つしない。同じような景色が続く。

「、、、帰ろう」

「帰る場所があるのか」

「誰っ!」

いつの間にか人がいた。その背にある翼、、、僕と同じ黒。

「あなた、、、ねぇ、この先に僕と同じ色の翼を持った人たちががいるって本当なの?」

「確かに、お前と同じ色の翼を持った連中がこの先にいるよ」

「どこ?教えて。そこが僕のいる場所なんでしょう?白の中に黒はいらないって」

「白の中に黒はいられない。だが白にうまれた黒を認めることはない。
 つまり、お前の居場所はどこにもないということだ」

「そんな、、、」

どちらにもいられない。じゃあ、僕はどこに行けばいいの。

「この世界から堕ちる覚悟があるか?」

「え、、、」

すぐ目の前にいた。片目に大きな傷がある。何、、、、

「どのみちどちらにもいられないのなら、何処へ堕ちようがここよりはましかもしれないぞ」

「、、い、や、、離して!」

説明の出来ない恐怖。ただこの腕から逃れたい。

「ひいっっつ!」

い、、いたいっ!、、、これ、、翼が傷ついた、、、あ、、

「、、、あ、、、や、、め、、うああっっっつ!!」

焼けるように背中が熱い。片側だけが、、誰か、、、シャルミラ、、、


「、、しっかり、キュリオ」

「、、う、、ああ、、、」

シャルミラの声がした。

「誰がこんなことを、、、」

「、、シャルミラ、、」

シャルミラといる。それがわかった瞬間蘇る感覚。

「い、、痛い!助けて!あ、、う、、いたいよ、、、ねぇ、、、
 シャルミラ、、あ、、いや、、、来ないで、、、来ないでっ!」

「キュリオ、しっかり。私のほかには誰もいない。私を見て」

「こないでよ、、、どうして、、」

どうして僕の翼なんか欲しいの?あの人は誰?

「、、片目を怪我してた、、、黒い翼、、、あの、、人、、」

「片目の黒、、、まさか、風響が」

浮かぶ、、影が、、

「シャルミラ、、、助けて、、痛いよ、、、」

シャルミラの双翼に包まれた。綺麗な白。

「落ち着いて。誰もこないから」

シャルミラの声は優しい。つかの間でも眠らせて、、、。


シャルミラは傍に居てくれる。

だけど、黒の片翼になった僕をそれでも庇うシャルミラはもっとひどい言われ方をされた。

「、、、、ごめんね、、僕のせいだ、、。堕ちるよ」

シャルミラは綺麗な白。それを守らなきゃ。

あの森の中に堕ちる場所があるって、聞いたことがある。僕はその場所を探した。

へとへとになるまで歩いた。でたのは湖。

「、、、喉渇いた、、あ、、」

水の中に知らない場所が映っていた。見たことのない町。

「ここが、、、そうなの?」

水の中に足を入れた。地についた感触はない。シャルミラ、、、ありがとう。さよなら。

水の中に躍らせた。、、、そのつもりだった。なのに

「、、キュリオ、、上がって、、」

「シャルミラ、、、」

水の中から見える。僕の腕を掴んでいるシャルミラが。

「、、、駄目だよ。離して」

「どんな言われ方をされようが、途中で放り出すことなんかしない。早く」

シャルミラの身体が落ちる。いけない。このままじゃシャルミラまで。

「お願い、離して!シャルミラまで堕ちる!」

「、、、、ならば一緒に堕ちましょう」

「だめ!」

、、、水の中、シャルミラに抱きかかえられていた。ごめんね、、、僕のせい、、

「、、、私は自分の意志で堕ちたのだから」

声が波のように揺れた。


キエヌという町。その中心に立つ塔が僕たちのいる場所。

物語が生まれて、帰っていく。人々の中へ。それを見ているのが、僕の日常になった。

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